「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「あ、千里君?」


エレベーターを降りてエントランスを出た俺に気付き、そう声をかけるのはここの大家の白井さん。
マンションの家賃収入で、生活をしているらしい。
旦那さんが去年、亡くなってから暫くは塞ぎこんでいたらしいが。

その白井さんは、何故か俺に構ってくる。


「こんにちは」

ニコリともせずそう言うと、白井さんはにっこにこしながら、俺に近付く。


「今日、夜いるかしら。
今日ね、夕飯煮物にしようとしているんだけどきっと作りすぎちゃうから…」

「今日、多分いると思います」

「そう?なら、夜持っていくわ」

「俺、いつ帰るかわからないんで俺から家に行きますよ」

「あら、千里君は優しいねえ」

「そうですかねえ」

「ふふっ」

また、嬉しそうにころころ笑うと白井さんは手を振って俺を見送った。
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