「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「……そっか、じゃあいつかね」

「そうだな」


それから愛海がその話を出す事はなかった。
だから、俺も出さない。


…遊園地は。
あいつと行ったきりだったから。


誰かと行きたいと思えなかったんだ。


どうしてだか、わからない。
だけど。


穢したくなかった。


あの想い出を。
俺がまだ、愛情を信じていたあの時を。



「今日は帰ったら何しようか」

「別に。何も」

「ええ、暇じゃん」

「じゃあ寝る」

「えっ、ち、千里…そんなまだ夜になってな…」
「盛ってんじゃねえ」


寝るって何を勘違いしてるんだ、この女は。
俺は眠いだけだ。

それに俺は欲求不満じゃねえ。

隣を見ると、真っ赤な顔で俯く愛海。
そんな愛海を横目で見ながら。


「そんなヤリてえんなら俺を寝させないでみろよ」

「…っ」


バッとこっちを見ると、愛海は真っ赤な顔を更に赤くさせた。
まだ赤くなるか、と感心するほど。
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