「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「はっきりとな。
俺は断ってるけど。
……なあ、愛」

「なあに?」

「好きって何だ」

俺の質問にキョトンとした顔を見せる。
さっきまでの大人びた顔からは想像できないほど、その顔は子供っぽい。

それから、目をゆっくりと細めた。


「千里、私も分からない」

「……」


愛は目を伏せると、タバコを灰皿に置く。
その空いた手で俺の頬を撫でた。


「分かってたら…」


そのまま、俺の唇を軽く摘まむようにキスをする。


「きっと、私は千里と一緒にいないわ」


そうして、再度俺にキスを落とした。


………どうして。


この感情が安心するのだろうか。
愛海の真っ直ぐな愛情は苦しいと思うのに。


愛の不安定な心は、こんなにも安心する。



……それはまるで。

「愛」を知らない俺を肯定してくれているようで。


こんな欠陥だらけの俺でも受け入れてくれているようで。
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