「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
“レンタル彼氏をするのにぴったり、に見える”
“……実は、返品されたんです”
靄がかかった俺の心を誰か、晴らしてくれないだろうか。
誰でも、買った“商品”に“不良”があったら…返品、交換する。
それと同じ。
俺は【モノ】だ。
さっきから鳴っている携帯を、俺はやっと手に取った。
見ると、知らない携帯番号。
「……客、か」
独白すると、俺は佐々木から受け取った資料に目をやった。
名前は――――… 愛。
理想は、………は?
≪自然体の彼氏≫
「……自然体?」
疑問を口にしながら、俺は通話ボタンを押す。
やっと通じたからか、通話口からは文句が聞こえた。
「遅いっ!」
「………愛?」
「そー、愛。千里、遅い!電話遅い!」
愛は少し高い声で、きつい口調だった。
早口に次々と不満を捲し立てる。
「ごめん」
「許さないっ!だから、今すぐ迎えに来て!」
「……今?」
腕時計に視線を落とすと、まだ時刻は十時を回ったばかり。