「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「どこ行こうか」

「どこでも」

「そういうのは男が決めるんでしょ!」

「……」

そう言われても、女とどこか出かけるのは得意じゃねえし。

俺が黙ったのを見て、愛はイラついた声を出しながら

「はいはい、わかった。
私が決めますよ」

そうぶっきらぼうに言った。


「そういうの知らなくて、悪い」

「勉強しておいて。私の彼氏なんだから」

「……わかった」

「あら、素直」

「まあ」


正直、何だ、この女って思ってるけど。
そう言いたい気持ちをぐっと堪えながら、俺はそう言う。


すると、愛は突然口を噤んだ。


急な沈黙に俺は愛に視線を送る。
だけど、愛は運転している事もあってかこっちを見ようともしない。


さっきまでひっきりなしに俺の文句を言っていたのに、急に黙られるとそれはそれで不気味だ。
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