「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「行こうっ」

愛は駐車場に車を止めてから、俺の腕に自分の腕を絡ませた。
ホテルの従業員は愛を知っているのか、愛に挨拶を交わす。

それを愛は無視しながら、先へと進む。


「これは、愛お嬢様。ようこそ、お越しいただきました」


そう丁寧に挨拶をして来たのは、胸のバッジに支配人と書かれた白髪の男の人。
それに愛は

「あ、ランチ行きたいんだけど。じい」

軽い口調で話す。
だけど、支配人はそれに笑顔を崩すことなく対応している。


「はい、お嬢様、今日は旬の魚が特に美味しいですよ」

「え~魚ー?お肉がいい」

「お肉ももちろんご用意しております」

「さっすが~。じい、今日部屋空いてる?」

「もちろんでございます」

「じゃあ、一日泊まるー」

「かしこまりました」

「あ。邪魔しないでね」


ニヤっと笑うと、愛は俺の腕を強く引っ張って、自分に寄せる。


「“彼氏”と一緒にいるんだから」


一瞬、支配人が目を真ん丸にした。
だけど、すぐにさっきみたいな笑顔を零して

「ふふ、わかりました。よく言っておきます」

そう言った。
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