棘姫
ここにいる子供達は、
外で遊べる時間も限られてしまう。

病院の庭は基本的に芝生で草むらがない。

四葉なんて探せないよね。



"みんなで退院できるように"

自分だけじゃなく、他の子供達の幸せも願っている少女。

今の私達は純粋に、
他の人の幸せも願えてる?




『りー姉ちゃん。
これ、読んでー!』

別の子が絵本を抱えて走ってきた。
持ってきたのは
【眠りの森の美女】


「また?
もう連続でこの絵本だよ?」

『いいの。
このお話大好きだから。
いつか、王子様にお迎えに来てほしいもん!』


時々この純粋さが可哀想になってくるよ。


私だって、
昔は信じてた。

こんな風に、お伽話のように幸せになれると信じてたの。


でも、
現実は優しくなんてなかった。

全ては2年前のせい。


あれ以来、
私は恋も愛も否定するようになった。

だって、私には無関係になってしまったのだから。


誰かを好きになっても、
私には無意味なんだ―‐‐





『…りー姉ちゃん?』

絵本を抱いた子が首を傾げた。

「ぁ、ごめんね。
じゃあ絵本読もっか」

『やった〜!』


本を受取りベッドに腰かける。
丁度、一人の看護士が部屋に入ってきた。


『李羽ちゃん、ごめんねぇ。すっかり子守りさせちゃって』

点滴の様子を見ながら、私に話し掛ける。


「いえ、私が好きでやってるんですから」

『悪いわね。
でも、李羽ちゃんなつかれやすいのねぇ。将来、良いお母さんになるわよ〜』

ケラケラ笑いながら、看護士は別のベッドを見に行った。

< 10 / 134 >

この作品をシェア

pagetop