棘姫
恭哉怒ってるかな?
どうやって声掛ければいいんだろ?
あれこれ考えながら階段を下りていく。
『ほらほらっ。
急ぎなさいよー』
リビングには余裕で髪を巻いているお姉ちゃんがいた。
お姉ちゃんは美容系の専門学校に通っている。
私とは違って綺麗で明るく面倒見の良い性格。
友達も多くて、
彼氏だっている。
彼氏とはかなり仲良しで、
この前なんか『赤ちゃん欲しいねー』なんて話をしてた。
私にはないものをたくさん持っている。
少し、羨ましいなぁ。
『どしたのよ、ボケーッとして。早く行かないと、恭哉君待たせるよ』
ニヤつきながら言うお姉ちゃん。
恭哉…
「うん…。
いってきます」
『はぁい、
いってらっしゃーい』
鏡越しに笑うお姉ちゃんに見送られ、相変わらずモヤモヤした気分で玄関へ向かった。