棘姫
2人で歩く通学路。
すぐ隣の恭哉を見上げる。
こうやって普通に話せてるのがすごく嬉しい。
なんだかくすぐったい気分。
恭哉が怒ってなかったことに、本当に安心した。
『ん、どした?
なんかさっきから俺ジッと見てない?』
「ぁ…ううん。
なんでもないっ」
『ふーん…そっか』
昨日はただ単に喧嘩しちゃっただけだよね?
私達、昔からちょっとした事で喧嘩することもあったから。
でも、いつだって直ぐに仲直り出来てた。
変わってなくて…
よかった。
…そう。
何も変わってないと思ってた。
勝手に、そう思い込んでたの。
私達の“何か”は確実に変わり始めていたのに。
はっきりとは分からないけれど、目には見えないけれど。
変わり始めていたんだね。
変わる事を“怖い”と思い込んでいた私は、気付いていないフリをして逃げていた。
自分も相手も…
私自身が作り出していたトゲで、傷付けながら。