棘姫
日が短くなる冬。
まだ6時だというのに外は真っ暗だった。
今日は由愛も寄り道はしないみたいで、一緒に帰ることなった。
由愛の家の近く、河原沿いの道を歩いていく。
「あ、もう星出てるよ」
なんとなく見上げた空。
すでに小さな光が散りばめられていた。
『本当だ。
冬は夜が来るのが早いわね』
隣からは消えそうな声。
気になって振り返ると、由愛は少し後ろに立ち止まり空を仰いでいた。
色を失ってしまった瞳で。
「ねぇ、星…見よっか?」
『……は?』
私達は河原の芝生に腰を下ろし、空を眺めることにした。
『こうやって意識して星見るのは何年ぶりだろう…。いつも必ず真上にあるのに、なんで気付かないんだろうね』
空を見上げる由愛の横顔は、今にも消えてしまいそうな程儚く映る。
”俺ら、近付き過ぎたのかな…”
どこからか、恭哉の声が聞こえた気がした。