棘姫

だけど、高校になっていろんな人に出会った。

決して綺麗とは言えない噂だって耳にする。



”軽い気持ちで彼氏とヤったらデキちゃって…中絶したの”

こんな話を耳にしてしまった時はショックだった。




今の人間は…

命の重さすら分からなくなってしまったの?





『…そうね。
あんたの言いたいこと分かるよ』

静寂に、由愛の声が静かに響く。


『大人になっていく度に、知らなくていいことまで知って…真っ白で純粋だった心がどんどんドス黒く汚されていくのを感じるわ。
自分が汚すぎて、本当に綺麗なものまで忘れていってしまう。なんでこんな世界なんだろう?』


溜めてたモノを吐き出すように由愛も一気に喋った。

大きな灰色の雲が月に覆い被さり、更に光を奪われていく世界。





私と由愛。
共通して持っていたのは

空っぽの心。
辛い現実を見てきた瞳。



この世界に存在する本当に綺麗モノも見付けられず、いつも哀しみばかりを拾い上げてしまっていた。


本当に愚かなのは…
私達の方?



静かな河原で私達を、冷たい澄んだ空気と夜の闇だけが包みこんでいた。



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