棘姫
一気に強張る体。
冬の外は寒いのに、嫌な汗が流れた。
「あ、あのさ!!
杏ちゃん…どうしてこんなとこにいるの?」
話題を変えたくて、無難な質問をする。
『あ〜、
あたし今日引っ越してきたの。
来月から学校にも通うんだ。李羽ちゃんと同じとこだといいなぁ』
杏ちゃんはまたニコッと笑う。
『じゃ、あたしそろそろ帰らなきゃ。またねぇ!!』
小さく片手を振ると、その後ろ姿は闇に紛れていった。
『ねぇ、あの子…
”体の具合どう”って言ってたわよね?あんた、どっか悪いの?』
由愛が遠慮がちに静かに聞いてきた。
「…うん。
ちょっと、ね。
病院に通ってた時期があったの」
私は由愛とは別の方を見ながら言った。
『ぁ…。
そう、なの』
少しでも私の様子に感付いてくれたのか、由愛はそれ以上しつこく聞いてこなかった。
言いたくない…。
せっかく仲良くなれたのに、由愛にまで病気のことを知られたくなかった。
私は病気のことを隠している。
由愛だって…私に隠していることがあるでしょ?
いつかお互いが、抱えているモノを打ち明けられる日は来るの?
本当に分かり合えた時
私達の何かが変わったりするんだろうか…。