棘姫
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コツ、コツ…
薄暗いマンションの階段にあたしのブーツの音だけが響く。
さっき河原で李羽の知り合いらしき子と出会った。
少女の口からは病気を連想させる言葉が飛び出していたと思う。
李羽は…
病気なの?
”お願い。
踏み込まないで”
李羽の瞳がそう物語っていたから、追求したりはしなかった。
けど、やっぱり気になってしまう。
あの恭哉という子は何か知っているんだろうか?
ドアの前で立ち止まる。
鍵を取り出そうと鞄へ手を入れた時、携帯が震えた。
震えているのは、今日李羽には壊れたと嘘を吐いたピンクの携帯。
黒じゃなかったことに安堵する。
うっかり李羽の前で使ってしまったけど、黒の携帯は…いわば援交専用。
出会い系等のサイトもこっちから開いていた。
ピンクの携帯を取り出す。
画面には【シュウ】
またかかってきた…。