棘姫

黒と白


気付くと朝になっていた。

眠い目を擦りながら、ホテルの一室で起き上がる。


隣には上半身裸の男が眠っていた。



‐―何も感じない。

知らない男と寝たのに、
あたしは何も感じない。


もう心が壊れているから?


あたしの心は壊れてる。

まともなら、
こんなことやらないわ。


全てはあの夜に壊れたのよ…―





しばらくすると男も起きた。


着替えて出る準備をしていると、鳴り出した携帯の着信音。

あたしのじゃない。



男がポケットから携帯を取り出す。

途端に真っ青に染まる顔。
奥さんってとこか。


ペコペコしながら必死に言い訳している男が、惨めで情けなくて。

あたしは面白くて、笑いを堪えるのに必死だった。




壊れていけばいい。

あんたたち夫婦だって、
もう愛なんて冷めてしまったんでしょう。


あたしの様に…
壊れていけばいいわ。




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