棘姫

家の近くの河原に着いた。

朝だからか誰もいない。


夕暮れ時になると
陽の光が水面に反射して、川がオレンジ色に染まる。

今の季節、秋は特にそれがとても綺麗。




ボーッと川を見つめていたあたし。

視界の隅で何かが動いた。


目をやると、地面に座り込み手探りで何かを探してる一人の少女。



これが、あたしと李羽の出逢った瞬間だった。






髪は鎖骨につくくらいの長さで、白い長袖のワンピース姿。


本当に白いワンピ着て、草むらにいるような子がいたのか。

漫画の世界だけかと思ってたよ。

草原じゃなくて、
草伸び放題の河原なのが惜しいな。



…とか思いながら、
その子の"何か"にあたしは目が離せなかった。





風が吹き、
草を撫でる音がした。


その風に導かれるように少女が顔をあげる。



一生懸命何か探していたけれど、何も映していなかった瞳に"あたし"という存在が映った。




交わる2人の視線。

逸らしたいのに、
何故か躊躇ってしまった。



少女が数回瞬きをした。
あたしはハッと我に返る。


「な、何?
じっと見ないでくれる」

軽く睨みを利かす。

本当に見とれていたのはあたしの方なんだけれど。




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