棘姫
"友達作ろうとしない"
恭哉が口にしたこれは嫌味なんかじゃない。
事実だよ。
元々人見知りが激しいせいもあって、高校へ入ってからは特に仲良い子なんていない。
クラスの子とは時々喋るけど、いつも一緒にいるような友達を作ろうとしなかった。
理由…というか、ただの言い訳なら一応ある。
そんな私に対して、恭哉は普通に誰とでも仲良くなれる性格。
恭哉自身は全く意識してないけど、女の子からもまぁまぁ人気があるみたい。
高校に入ってからも、告白されたとかいう噂を何回か耳にしたことがある。
でも、それらを全て断わったらしい。
バレンタインだって誰からもチョコを受け取らなかった。
なんでなんだろう?
告白した子の中には、私よりも可愛い子がたくさんいた。
今だって、私と一緒にいないで早く彼女…作ればいいのに。
「ねぇ、恭哉?」
『んー?』
「なんで…彼女作らないの?」
無神経にも、私は何の躊躇いもなく聞いた。
『なんでだと思う?』
質問を質問で返される。
「そんなの…知らないよ」
嘘だ。
こんなの嘘だよ。
本当は…知ってる。
恭哉が彼女を作らない理由、告白を全て断わる理由――
ただの勘違いかも知れないけど、なんとなく分かる。
分からないようなフリしてるけど…本当は気付いてる。
なのに、私は真剣に向き合おうとしない。
ダメなんだ。
誰かを好きになっちゃダメなの。
無駄なんだ。
誰かを好きになるだけ。
愛なんて知ったら辛いだけ、哀しくなるだけ。
手にしちゃダメなんだよ…。