棘姫

聞いたりなんか出来ない。

恭哉まで離れてしまったら、私は本当に独り。



恭哉はいつも隣にいてくれた。

それが突然いなくなってしまうなんて…私には考えられないよ。



こう考え始めたら、まだ恭哉が好きなのを痛いくらい実感する。

"好き"だなんて…
絶対に言えないけど。



この想いは消さなきゃダメ。

だって、さっき言ってたよね。


"結婚して子供が産まれたら、一緒に公園に来たい"


私じゃ叶えられない。
絶対に不可能なんだよ…




詳しくは何も聞いてこなかったけど、恭哉だって病気のことは気にしてると思う。

この前、風邪を引いただけなのにすごく心配してくれたから。




いつかちゃんと話そうと思ってたけれど…

話して気まずくなるなら、話す必要はないのかもしれない。


私と恭哉は…
結婚するわけじゃない。


恭哉も私を気遣って何も聞いてこない。

話さなくても…いいよね?



こんなの、ただの甘えでしかない。

恭哉が私に優しくしてくれるのに甘えてるだけ。


私はいつまでこの微妙な距離感を続ける気なのかな…。



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