棘姫
"こんなことしてはいけない"
分かってるよ。
本当は分かってるの。
止めようと思えば止められる。あたしはそこまで溺れてない。
そう思ってたけど…
求められる間だけ、あたしは自分の価値を感じられる。
お金を出して触りたい程
相手はあたしを求めてるのよ。
…つっても、
求めてるのなんて結局は
くだらない快感なんだろうけど。
相手だって、あたしじゃなくてもいいはず。
あたしと同じことしてる女なんて、腐るほどいる。
光の下では汚くて醜い自分が目立ってしまうけれど、夜の闇の中ではみんなやってることは同じ。
みんな同罪に思えてくる。
あたしの姿も隠してくれる。
こうしてあたしは今日も夜の街へ向かう。
もう光の下へは行けない。
自分独りの力では
戻れないんだよ――…