棘姫
いろんな生徒で溢れている廊下を、珍しく一人で歩く。
誰かに近寄られたくない。と思うのに、一人で大勢の中に紛れているのが落ち着かない。
学校でさえこんなことを感じるあたしは…
どれだけ臆病なんだろう。
途中、何人かの子に声を掛けられながら、変な緊張感と共に目的の場所に着いた。
1年5組。
1組のあたしとは正反対の位置にある教室。
あの少女のいる教室。
さっきマヤ達から聞いた話だと、その恭哉とよく一緒にいる少女は"リウ"という名前。
この5組にいるらしい。
開けっぱなしのドアから室内の様子を窺う。
窓際の一番後ろの席―
そこに少女はいた。
いくつものグループが作られているのに、少女はどこにも属していない。
ただ、
窓の外を眺めていた。
やっぱり全てを拒絶するように、何も映していない瞳で。
こんなに汚いあたしだけど、あなたの瞳に――
もう一度映ることが出来ますか?
「…リ、リウ…ちゃん?」
気付いたらあたしは名前を呼んでいた。
戸惑いながらも、あたし自身の存在を告げるような、大きめの声で。