棘姫
人もまばらになり始めた学食。
まるで隠れるように、私達は一番奥の席に座った。
『まさか同じ学校だったなんてねぇ…』
少し皮肉っぽく由愛ちゃんは呟く。
今目の前にいるのが、作っていない素の"由愛"なんだろう。
「どうして私に会いにきたの?」
真っ先に浮かんだ疑問をぶつけた。
『何よ、嫌味?
会いに来ちゃダメなの?』
由愛ちゃんはムッとしたように、目付きを鋭くさせる。
「違うよ。
ただ不思議に思ったの。
私に声掛ける子なんて、滅多にいないから。だから嬉しかったよ」
心から思ったことだから、自然と笑みが零れる。
由愛ちゃんはフイッと顔を背けてしまった。
彼女なりの照れ隠しなのかな。
『あんた、なんで一人でいたのよ』
ストローで氷をつつきながら、由愛ちゃんが聞いてきた。
浮き上がっては沈められるジュースの中の氷。
上へ登ろうと必死にもがいているよ。
まるで由愛ちゃんみたい…