棘姫
なんで一人なのか?
そんなこと聞かれてもちょっと困る。
「なんとなく…かな。
それに誰かとベタベタするの、あんまり好きじゃないから」
『ふーん。
でも一人だとつまらないでしょ?』
由愛ちゃんが頬杖をついた。
"一人はつまらない"
そうなのかもしれないね。
でも、由愛ちゃん。
あなたも私と同じことをしてる気がするよ。
「由愛ちゃんは楽しい?」
逆に私から聞いてみた。
氷を沈めていたストローの動きが止まる。
本心を探るように由愛ちゃんをじっと見つめると、すぐに視線を逸らされた。
由愛ちゃんと出会う前から、彼女のことは一応知っていた。
"可愛くて成績優秀。
誰にでも優しい完璧な子"
こんな噂を耳にしていたから。
廊下で時々見掛けた由愛ちゃんは、たくさんの友達に囲まれていた。
自分の存在を隠すかのように、回りを人で覆っていたね。
その輪の中心でいつも笑っていたけれど、私には無理して笑ってるようにしか見えなかったよ。
たくさんの友達に囲まれながら、由愛ちゃんはその子達と上手く距離をとっていた。
決して誰も、心の中へ踏み込ませないように。
「由愛ちゃんはいつも、たくさんの友達と一緒だよね。でも、私には…由愛ちゃん、全然楽しそうに見えないよ」
由愛ちゃんは瞳の色を大きく揺らす。
私は言い切った。
"その話題には触れないで"
由愛ちゃんが瞳の奥で、そう訴えていることに気付いてたクセに。
やっぱり私は…
冷たい。
誰かを傷付けることしか出来ないなんて…