棘姫
中学の時も煙草を吸っている奴なんて、普通にいた。
飲酒だって同じだ。
決して普通になってはいけないことだけど、現にこの街ではそれが普通に見掛ける光景になりつつある。
一体、今の世の中はどれだけ荒れてるんだろう。
豊かになればなるほど、
人の心は荒んでいく。
というのは、本当のことなのかもしれない。
『それにさぁ…』
急に小さくなったミノリの声に耳を傾ける。
『酔ってたら、援交してる間のことなんて覚えてないの。記憶が飛んじゃってるからね』
横の窓ガラスに指を這わせ、呟くように言った。
これが…ミノリが酒を飲む、本当の理由なんだろうか。
あたしは前にも酔い潰れていたミノリを介抱したことがある。
その時に、ミノリはあたしが知らなくてもいいような、余計なことまで喋っていた。
『あたしがなんで援交してるかって言うとねぇ、家にママとパパが帰って来ないからだよ。
2人共浮気してるの。
タイミング同じでしょ〜?
ミノリはもう、いらなくなっちゃったんだって…。
そんな時に街フラフラしてたらさぁ、一人の男に会ったの。あたし、もう自暴自棄になっててね。そいつに抱いてもらっちゃった。
そしたらそいつ、お金くれたのよ。それに…抱かれてる間はさ、相手はあたしを必死で求めてくるの。
"あたしを必要としてくれてるんだ"
って、変な錯覚起こしちゃうんよね。バカみたい…』
寂しそうな表情で、泣きそうになりながらミノリはあたしにこう言った。
結局はこの子は一人が寂しいんだ。
愛されたいんだよ。