棘姫

中学の時も煙草を吸っている奴なんて、普通にいた。

飲酒だって同じだ。



決して普通になってはいけないことだけど、現にこの街ではそれが普通に見掛ける光景になりつつある。




一体、今の世の中はどれだけ荒れてるんだろう。


豊かになればなるほど、
人の心は荒んでいく。

というのは、本当のことなのかもしれない。





『それにさぁ…』

急に小さくなったミノリの声に耳を傾ける。


『酔ってたら、援交してる間のことなんて覚えてないの。記憶が飛んじゃってるからね』

横の窓ガラスに指を這わせ、呟くように言った。



これが…ミノリが酒を飲む、本当の理由なんだろうか。






あたしは前にも酔い潰れていたミノリを介抱したことがある。

その時に、ミノリはあたしが知らなくてもいいような、余計なことまで喋っていた。



『あたしがなんで援交してるかって言うとねぇ、家にママとパパが帰って来ないからだよ。

2人共浮気してるの。
タイミング同じでしょ〜?
ミノリはもう、いらなくなっちゃったんだって…。

そんな時に街フラフラしてたらさぁ、一人の男に会ったの。あたし、もう自暴自棄になっててね。そいつに抱いてもらっちゃった。

そしたらそいつ、お金くれたのよ。それに…抱かれてる間はさ、相手はあたしを必死で求めてくるの。

"あたしを必要としてくれてるんだ"

って、変な錯覚起こしちゃうんよね。バカみたい…』



寂しそうな表情で、泣きそうになりながらミノリはあたしにこう言った。


結局はこの子は一人が寂しいんだ。

愛されたいんだよ。



< 66 / 134 >

この作品をシェア

pagetop