棘姫

人間は決して一人では生きていけない。

こんなこと解りきってるはずでしょう?


愛を求めるのは、してはいけないことではないはずなのに、何故あたし達はこんなやり方でしか、愛を求められないんだろう。


何故あたしはこれ以外に…愛を求める術を知らないんだろう。



一体どうして、必死に伸ばしている手を…握り返してくれる人がいないのでしょう。





気付くとミノリは小さな寝息をたてていた。


目覚めるのを拒むかのように、目をギュッと閉じて眠っている。

一体この子は、誰の隣でなら安心して眠ることが出来るんだろう。



隣のイスに脱ぎ捨てられた白いファーの付いたコート。

あたしはそっと…、
それをミノリに掛けてやった。




現実はあたし達に優しくない。


ならば、せめて…

目覚めることを望んだりはしないから…夢の中でくらいは彼女に、愚かなあたし達に愛を―――




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