棘姫
『もう、昨日はホントごめんねぇ!!あたしかなり酔っててさぁ』
翌日。
昨日と同じ店の同じ席。
あたしはミノリと向かい合わせに座っていた。
「別にいいけど。
今度から気を付けなよ?
変な奴に捕まっても、文句言えないからね」
両手を合わせるミノリに、念を押すように言った。
『はぁい。
ほどほどにするよ。
でも由愛ちゃん、久しぶりやね。最近来る回数減ったことない?』
ピンクラメのネイルが光る指先で、ミノリがポテトを摘む。
「うん、まぁね。
いろいろあったのよ」
『え、何?!
男でもできたのか〜?』
ニヤニヤしながら聞いてくるミノリ。
この子もこういう話題は好きらしい。
やっぱり女の子だな。
「冗談じゃないわ。
男なんか…嫌いよ」
あたしは吐き捨てるように言った。
『ふーん、そう。
詳しくは聞かないよ。
でも、由愛ちゃん。
本当にちょっと変わったよね』
意味ありげな一言。
「変わったって…何が?」
あたしは首を傾げる。
髪型も服装も、もちろん性格も何も変わってない。
ミノリの目に写るあたしは、一体どこが違うって言うのよ。