棘姫

お互いに何も話さないまま、あたし達は冷たい夜の闇を歩く。


しばらくして蒼が歩みを止めた。

辿り着いたのは、
前回と同じ公園だった。





『どうしてまた…繰り返すの?』

あたしと向き合った蒼の表情は、苦しみで満ちていた。


「だから…!!
関係ないって言ってんでしょ?邪魔しないでよ!!」

本当は嬉しかったのに、張り合うようにあたしは強がる。


『本当は嫌なんだろ?
今日の笑顔は特に、本当に苦しそうだった…。放ってなんかおけないよ』

今にも消えてしまいそうな声。

こんなにも胸が締め付けられる。




どうしてこいつは…出会って間もないあたしを、こんなにも心配してくれるの?



蒼があたしの抱えている、目に見えない苦しみに気付いてくれたのが嬉しい。

そう思う反面、

誰かに自分の心に踏み込まれ、理解されるのが怖い…。


そんなことを思い、焦って余裕がなくなってきた自分がいる。


言い返す言葉も見付けられず、あたしはずっと俯いていた。






『最近はあまり見掛けなかったから、もう大丈夫かと思ってたのにな…。また昨日現れたから、ちょっと心配だったんだ』

その一言に反応して、あたしは顔をあげた。

違和感を覚えたんだ。



「確にあたしは、昨日久しぶりにあそこへ行った。でもあんた、なんでそんなこと知ってるのよ?」


そう。
何故、昨日あの通りへ行ったことを知ってるの?

蒼とは昨日会ってない。



もしかしたら、
蒼はずっとあたしを…




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