棘姫

その費用を女一人で稼がなくてはいけないのはとても大変なこと。

もちろん、その母親が入院した時ちぃちゃんは親戚の人にお金の相談を持ち掛けた。


でも、誰一人として”お金を助けてあげる”とは言ってくれなかったのだ。





『お金と人の命、
一体どちらが大切?』


こんな質問、答えなんか分かりきってるはずでしょう。

なのに、誰も助けてはくれない。



人や血の繋がりなんて、結局はお金で簡単に断ち切られてしまう。

こんなにもあっけないものだなんて。

なんて汚いの…





それにこれは、あたしが援交を続ける理由の一つでもある。

もちろん、ちぃちゃんはあたしが援交してるなんて知らない。



12時までのバイトと偽り、あたしは夜の街へ繰り出していた。

援交すればお金なんて簡単に手に入る。


おかしな話だけど、貰える金額はちぃちゃんの時給よりも高い。




誰からも見放されていたあたしを、ちぃちゃんはたった一人で引き取り、育ててくれている。

だからあたしだって、そんな人の助けになりたい。



本当にバカだけど、あたしはそんな風な考えを持っていた。

自分の体を売って手にしたお金が、恩返しになんてなる訳ないのにね…。




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