棘姫

『やっぱりどこか捻ったりした?』

蒼が心配して、顔を覗きこんできた。


「平気。ごめん、ちゃんと気を付けるから」

乾いた笑い声を含ませながら言うと、何故か蒼は手を差し出した。



何?
この手は。


訳が分からなくて蒼を見つめる。





『はい。
手、繋ごうよ』

柔らかい笑みを向けられた。





「ぇ…え?!
無理、いいよ!!
ちゃんと一人で歩けるから!!」

普段見知らぬ男と平気で手を繋ぐあたしの口から出てるとは思えない言葉。


相手が蒼と意識するだけで、こんなにも照れ臭くなるなんて。

顔が熱い。





『そこまで否定する?
いいじゃん。人だって多いし、はぐれないように』

「でもっ、なんか…///」

『ほら、行くよ』

躊躇って、伸ばせずにいた手が、大きな温かい手に包まれる。


誰かと手を繋ぐのって、こんなにもドキドキするものだっけ?





手を繋ぎながら歩くあたしと蒼。


一体、他の人の目にはどんな風に映ってる?

友達?

恋人??



恥ずかしいけれど、言い表せないくらいに嬉しくて。

蒼の手を、弱い力で少しだけ握り返した。




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