棘姫

特に目的がある訳でもなく、目に止まった店に入っていく。

そんな感じでブラブラと過ごしていたあたし達。



それでも、十分に楽しい。

退屈なんて無縁の単語。


まるで…一時の淡い夢でも見てるよう。

穏やかで優しい時が
あたしの中に刻まれていく。


依然と手は繋がれたまま。




限られた時間を共有出来る人がいるのは、とても貴重な事なのかもしれない。

蒼だってあたしと似た気持ちで、今を過ごしてくれているの?




流れてゆく時を、止めることなんて不可能だし、ましてや巻き戻すことなんか出来ない。


それならば…

この夢のような時間を1秒でも長く感じていたい。

夜に始まる真っ暗な現実は、とても辛いものでしかないのだから。


他の思いより少しでも、この愛しい時間を心に深く刻みたいよ―――





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