棘姫
知らなかった。
当たり前だけど、蒼の家族の事情なんて知る由もなかった。
ここまで背負っているモノがあっただなんて、想像してなかったよ…。
本当は体なんか売りたくないのに、本心を押し殺し自分を売っている女性。
援交をする理由なんて、
本当に様々だ。
…あたしは?
あたしはどうなるの?
蒼のお姉さんが体を売る理由を知ったのに、それでもまだ援交を続けるの?
こんなバカな事してても愛なんて手に入らない。
愛だけじゃない。
心はすり減り、様々なものを失っていくだけ。
得るものなんて、初めから何1つ用意されていないじゃない。
こんなこと、とっくに気付いてた筈なのに…
"もう、援交なんて止めなきゃいけない"
少しでも、そんな気持ちが芽生えた瞬間――
決まって浮かぶのは、疲れきったちぃちゃんの横顔。
あたしが幼い頃から、ちぃちゃんは毎日休まず働いていた。
両親の病気の事があるから、やっぱりお金が必要なんだ。