棘姫
校内とは違ってヒンヤリした外の空気。
マフラーに顔をうずめる。
今日も曇り空だった。
『なぁ。
なんかあったろ?』
急に恭哉がこんなことを言い出した。
やっぱり小さい頃から一緒にいると、相手の少しの変化にも敏感になってしまうのかな。
「なんかって…別に、普通だよ」
変な風に心配を掛けたくなくて、無理して笑ってみる。
でもこんな行為、いつだって恭哉を傷付けるだけだったんだね…。
『絶対嘘だ。
明らかに沈んでんじゃん。俺ら、何年一緒だと思ってんの?』
少し怒ったような口調。
「そんなことないって。
ほら?私元々あんまり笑う子じゃないし」
そんな気遣いも跳ね返すように私は違うと言い張る。
『でも、由愛ちゃんと友達になってからは…最近はよく笑ってただろ?』
由愛の名前が出た時、
少しだけ肩がビクッとなった。
違う…。
由愛はそんなことしない。
ちゃんと信じてあげないと。
それに、いくら相手が恭哉だからって…こんなこと相談出来ないよ。
一番仲の良い恭哉だからこそ、由愛を白い目で見られたくないと思った。