こちらミクモ探偵事務所5

朝は紘哉の機嫌が一番悪くなるときだ。
特に、誰かに起こされると機嫌はどん底まで落ちる。

紘哉は欠伸を噛み殺し、羽兎の持っている携帯電話を指した。

「それで、その携帯は誰のだ?」

「……紘子ちゃんの」

「どうしてお前が持ってるんだ?」

「ひひひひひ……」

「何笑ってるんだよ。気持ち悪い」

「ち、違うって!」

声を震わせながら、紘子の携帯電話を握りしめる。
そして、泣きそうな声で叫んだ。

「ひ、紘子ちゃんが……紘子ちゃんが、いなくなっちゃったんだよ!!」

「……」

部屋の中が静まり返る。
遠くの方で鳥の鳴き声が聞こえ、隣で寝ている恵一が迷惑そうに寝返りを打った。

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