こちらミクモ探偵事務所5

ご飯を食べていた紘子がピクリと反応する。
しかし、彼女は何事も無かったかのように平然と近くのおかずに箸をつけた。

「イチゴのセールスマン、どんな感じなんですか?」

「それが、顔を見たことが無いのよ。インターホンすら出してくれないし」

「そうですか……」

「不本意だけど、怪しいと思わざるをえないわ」

「そいつの顔さえ分かればいいのに……」

部屋がしんとなる。
皆、それぞれ何かを考えているようだ。

「ごちそうさま」

その時、紘子が空の茶碗を持って立ち上がった。
彼女は茶碗を流しへ置くと、逃げるように台所を出ていった。

それを見たみどりが、申し訳なさそうに頭を下げる。

「ごめんなさいね、そろそろ家の事をしないと」

「いえ、こちらこそお忙しい所、すみませんでした」

みどりにお礼を言い、三人は台所を後にした。

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