こちらミクモ探偵事務所5

「花形さん、頑張れ!」

隣で拳を握りしめ、羽兎が恵一を励ます。
しかし、恵一は壊れた人形のように首を前後に振るだけで、何も言わなかった。

恵一が先ほど言いたかった事は、何となく分かる。
羽兎は恵一の言葉を代弁した。

「紘哉さんがボーッとするなんて珍しいね。何か気になる事でもあるの?」

「まぁ、一つだけ」

「ふーん。で、それって何なのさ?」

「……紘子ちゃんの事だ」

「え?紘子ちゃん?」

羽兎が驚いたように声をあげる。
紘哉は小さく頷いた。

「イチゴのセールスマンと言う言葉を聞いた瞬間、反応してた」

「そうだっけ?」

「お前……意外と周りの事見てないんだな」

「うん!」

「……嘘でもいいから否定しろよ」

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