こちらミクモ探偵事務所5

紘哉は後ろ手でドアを閉めた。

千尋はベッドの脇や、机の下などを探している。
紘哉も自分が《宝箱》を置いた周辺を探してみるも、見当たらなかった。

「どこ行ったんだろう……」

彼はふと、千尋の机の上を見た。
何枚か散乱しているルーズリーフには、文字がぎっしりと書いてある。

近くには、携帯電話とシャーペンがある。
紘子の言っていたことは、本当だった。

その机の端に、申し訳なさそうに置いてある《宝箱》。
故意に机の上を避けているのか、彼女はこちらを振り向きもしない。

「……あった」

「え?どこに?」

「机の上」

「嘘だっ!」

「現実」

紘哉の手には、例の《宝箱》とルーズリーフ。
彼女の顔が、一気に赤くなった。

< 179 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop