こちらミクモ探偵事務所5
追い詰めたと思ったのに、いつの間にか逆転されている。
証拠がない。
それは、紘哉達にとって大きな痛手となった。
羽兎は目を伏せ、恵一は悔しそうに唇を噛む。
紘哉は顔をしかめ、ため息をついた。
「――あのさ、もうヤメにしよう」
更に追い討ちを掛けるように、紘子の言葉が胸に刺さる。
紘哉は苦々しい表情で、彼女を見つめた。
「いいぞ!もっと言ってやれ!」
「はい?何勘違いしてんの?」
「……え?」
一瞬にして、信夫が固まる。
紘子は彼に歩み寄り、冷めた目で見上げた。
「私が言っているのは、ケイ兄達の事じゃない。お父さんの事だよ」