あした、晴れ~An enthusiastic kiss~
 外はすっかり暗くなっていた。

「優生さんはどうやって帰るの?」
「今日は自転車なんです。」
「そうなんだ。暗くなったけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ。乗って帰らないと明日が困るし。」
「明日は何時から?」
「10時からです。」
「僕も10時だから、今日送って明日の朝ピックすれば自転車を置いて帰っても大丈夫だよね?」
「え、でも迷惑になっちゃうから。」
「女の子を夜に1人で自転車に乗って帰らせるほど冷たい奴じゃないよ。」
「そんな……。」
「せっかく知り合いになれたんだし、これからよろしくってことでね?」
「あ、ありがとうございます。」
「じゃあ車こっちだから。」
「はい。」


 中途半端な距離を保ちながら駐車場まで歩く。口数が少なくなった彼女を見るとうっすら涙目になっている。

「どうかしたの?」
「いえ、すみません。」
「急に静かになったから眠っちゃったのかと思った。」
「歩きながら寝ないですよ~。」
「知ってるって。」

 きっと何かを思い出して悲しくなったんだろう。それを聞いてあげる程の優しさは持ち合わせていない。

 だから冗談でごまかして笑顔にさせるだけ……。


 車の中でも「ありがとう。」と「すみません。」を連発する彼女を見て笑ってしまった。明日の約束をしてアパートの中へ入っていく彼女を見届けて車を走らせた。

 家へ向かう途中でPanda Expressに寄り、夕飯を買う。これをあの静かな部屋で一人きりで食べるのだと思うと、瞬く間に僕の心はモノクロに変わった。
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