あした、晴れ~An enthusiastic kiss~
 行動派のミシェルだけあって、次の日には日時と場所を指定してきた。
やたら「ユイ」という女性をアピールしてくるところを見ると、純粋にルームメイトの役に立ちたいということだけではなく、それ以外の目的もありそうな様子が透けて見える。
 最近は、恋愛ゲーム-あえてそう呼ぼう。僕には本当の恋愛がどんなものなのかわからないのだから。-とも疎遠になっていた。僕の元から去っていく彼女達はいつも最後にこんな言葉を残していく。

「律は、本気で人を愛したことがないのね……。」

愛されているということを感じたことのない僕に、どうやって人を愛することができるのか、知っているなら教えてほしいくらいだ。
 催促される意味のないメールや電話のノルマから解放されている今の自由な状況は気楽で心地よかった。

(とりあえず会ってみるだけだな。相手の目的なら5分も話せばわかるだろう。)

ミシェルの希望通りにはならないと思うけれど……。心の中で呟きながら手帳に書き込んだ。


 約束の日の前日、僕はしまっていたテキストとノートを取り出した。「ユイ」という女性の参考になれば。そう思っていつものバッグの中にそれらも入れた。

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