あした、晴れ～An enthusiastic kiss~

「あの、ユイさんですか？」
「えっ！？」

驚いた顔でこっちを見上げる。確かにいきなり日本語で話しかけられたら脳内トランスレーターがあわてるのも無理はない。数秒の沈黙の後

「あっ、はい。ミシェルの……。」
「別人に声をかけたわけじゃなくてよかった。というか、先週お昼休みに……。」

「あ、あの時の！本当にすみません、ボーっとしてて。」
「いえいえ。とりあえず、初めましてかな？　清瀬　律（キヨセ　リツ）です。よろしく。」
「こちらこそ、初めまして。朝倉　優生（アサクラ　ユイ）です。今日は時間作っていただいてありがとうございます。」
「どういたしまして。ミシェルからね、時々話は聞いていたんです。日本の女の子と暮らしてるって。」
「そうなんですね。彼女いつも私のことを助けてくれるんです。今回もどうしようって言ったら清瀬さんを紹介してくれるって。」
｢クラスでもそんな感じだよ。なんて言うのかな、姉御肌みたいな？」
「あぁわかります！そのイメージ。」
「でしょう？」

　ミシェルの話ばかりで、彼女自身や僕についての話にはならない。正直アメリカに来てから知り合った女性の多くは僕が黙っていても、自分をアピールしてくるか、僕に対して質問の嵐を浴びせてきていたので少し面食らってしまう。動揺を隠しつつ会話を持たせていると、彼女の携帯が鳴った。

　渦中の人物かららしく、とても困った表情だ。この状況だと、ミシェルのおせっかいで２人だけにされてしまったんだろう。


（純粋にBulger対策がしたいだけか……。）

少しがっかりした気持ちになっている自分に苦笑いした。