恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
「……で、よく俺のこと覚えていたな」
ハル君はグラスを持って左右に小さく揺らした。
氷が涼しげな音を立ててグラスの中をクルクル回る。
勉強が終わった後、少しだけ話す時間を作ってくれたハル君。
第一声はそれだった。
「忘れるわけないじゃん。あんなに印象的だったハル君のこと」
「ハハッ、俺も紗夜香のこと忘れられなかったなー」
「えっ!?」
思いがけない言葉に頬が染まっていく。
それってつまり。
私のことが……好き、とか。
ってありえないでしょ、それは、あははっ。
けど、じゃあ一体どういう意味なんだろう?
訳が分からずにいるとハル君はグラスをテーブルに置き、眼鏡を外したかと思えば俯いて体を震わせた。
やっぱりハル君の言動は予測できない。
あの日も今日も、振り回されっぱなし。
「……プッ」
あ。
あっ。
あーっ!!
ハル君ってばよく見たら声を押し殺して笑ってるし。
無意識に頬を膨らませて、ハル君を睨み付ける。
顔を上げたハル君はそんな私を見て、涙を浮かべる目を手で拭いながら、
「本当に可愛いなー」
なんて言って、顔を真っ赤にして再び笑いを押し殺していた。