恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
いともたやすく出てきたハル君の言葉は私にとっては一大事で、特別な意味がないにしても特別に感じてしまう。
照れを隠したくて手に取ったグラス。
「クッ……それ、俺の」
動揺しているのもバレバレで、慌ててグラスを元の位置に戻した。
そして、未だ机の上に置きっぱなしだった自分のグラスを取りに行った。
音をたてないように少しずつストローで吸っていく。
何かすれば何かをやってしまいそうで、ひたすら飲むしかなくて。
時だけが静かに過ぎていった。
折角ハル君と話す時間が出来たっていうのに、いろいろと話をすることもできず。
ようやく笑いの落ち着いたハル君は眼鏡をかけて立ち上がり、荷物をまとめて私に今日の終わりを告げた。
その瞬間。
何だか無性に寂しくなって声をかけようとしたけれど。
ドアノブに手をかけて笑顔を見せるハル君に、先に言葉を奪われてしまった。
「二重人格じゃなくて、使い分けしているだけ。目上の人に敬意を表するのは当たり前のことだろ。
だからどっちも本当の俺。
……分かった?」