恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
これからバイトと言う香里奈と別れ、私は重い足取りで家へと向かった。
道端に散らばる桜の花びらを無惨にも踏み潰していきながら、考えるのは颯平のこと。
私って、ちっぽけな人間だったんだ。
たかがあれだけのことで、居留守を使って颯平に会わなかったり電話に出なかったり。
そんな私の突然の行動に、颯平は戸惑っているに違いない。
それでも意地になって理由さえ言わずに避けて。
何でだろう。
ムカムカするんだ。
鮮やかなピンク色の桜の花びらを、ローファーでグリグリッと踏み潰す。
アスファルトにめり込んでその色を失ってしまった花びら。
暫しの間、立ち止まって見下ろしていた。
春風が吹く。
宙に舞う花びらに取り残されて、今もその場に形を変えて止まっている花びらを眺めていると、
「あれっ、紗夜香?」
「……ハ、ル……くん?」
声のするほうへと振り返り、その場に固まった。
何でここにハル君が?
ハッとして足元を隠すように少し動かす。
「今帰り?」
「うん……」
急に自分のしたことを思い出して、心の中で桜の花びらに謝った。