恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
「この後何かある?」
「何もないけど? って、ハッ……先生、どこに行くの!?」
あの遊園地での出来事とシンクロする。
先生って呼ぶ約束だったって思い出しながら、前を歩いていくハル君に向かって叫んだ。
案外呼んでみたら、先生って言うのも恥ずかしくない。
「ついてきて」
振り返って柔らかな笑顔を見せたかと思えば、返事も聞かずにスタスタと歩いていく。
……何だかハル君らしいや。
後ろ姿を少し眺めて、小走りでその背中を追い掛ける。
自動販売機の前で立ち止まったハル君に追い付くと、
「どれがいい?」
「あ、紅茶」
音を立てて缶が落ちてきた。
屈んだハル君は私に紅茶を手渡して、自分はブラックコーヒーを買っていた。
「ありがと」
私の言葉に笑顔だけ返すとまた歩き始めて、大きな背中を眺めながら無言でついていった。
ハル君の柔らかな笑顔は何だか心地よくて、心の中がスーッと澄んでいく気がする。
やっぱり不思議な人。
これが大人の男の人なのかな。
トクン、トクンッ……
とリズムよく胸が音を立てる。
次第に穏やかな気持ちになりながら、どこに行くのかと期待に胸を弾ませる。