恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
「先生、何するの?」
「昔よくしなかった? 砂で山作ったり、穴掘って繋げたり」
逆さまにされた二つの缶の中から、水が勢い良く流れ落ちていく。
水は砂にしみ込んでいき、次第にその一体だけ薄茶色に変化していった。
「と言うわけで今から山作るぞ」
両手を砂の中に入れて、湿った砂をどんどんかき集めていく。
その様子を見ていると、何だか子どもの頃に戻ったかのようにワクワクしてきて、
「大きいの作ろう?」
スクールバッグを砂場の淵に置いてハル君の正面に屈み、負けじと砂をかき集め始めた。
ペタペタ、ペタペタ。
集めた砂を固めていく。
ペタペタ、ぺタ……ザーッ。
水分が足りなくなった砂が山から崩れ落ちてくる。
もう一度水を汲みに行ったハル君に取り残されて、私はまだまだ小さな山をジッと眺める。
砂を一握り掴んで、山の上で手を開く。
ザーッと音を立てて流れ落ちていく。
両側から山を両手で押さえて、少しして離してみる。
うっすらと私の手形が山に残る。
「紗夜香何してるの?」
「あっ、先生! ほら見て?」
「手形?」
「そうそう。小さい頃、こうやって自分の手形残して遊んだりしなかった?」
缶を置いたハル君はマジマジと山を見つめると、ゆっくりと手を近づけてきた。
「うわっ、小さいなー」