恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
私の話が終わるまで黙って聞いていた香里奈は、話が終わってからも何も言わず、次々とおかずを口に放り込んでいった。
つられて私も弁当を食べ始めた。
何だか居たたまれない空気が漂っていて、おかずの味さえ分からずに無理矢理流し込む。
いつもは短く感じる昼休みも一分一秒が長く感じながら、食べ終わった弁当箱をスクールバッグに入れた後。
私はまた無意識に、携帯を取り出してしまったんだ。
そこで香里奈が発したのが、さっきの“逃げ”という言葉。
私に向かってあんなに苛々している香里奈は初めてだった。
未だに携帯を握り締めている自分がどうしようもなく情けない。
「押せば?」
不意に頭上から声が聞こえて、私は勢いよく顔を上げた。
再び前の席に腰を下ろし、パックのコーヒー牛乳を飲んでいる香里奈。
よく見ると机の上にも同じものが一つ置かれていた。
「それ、あげる」
「あ、ありがと」
香里奈はまだ機嫌の悪い雰囲気を醸し出し、私はビクビクしながらもコーヒー牛乳を手に取った。
口に含んだそれは甘いはずなのに、ブラックのようにほろ苦く感じた。