恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
ハル君は何も言わずに微笑み、私は大きく息を吸ってその場を駆け出した。
何から話せばいいのか。
ううん、それどころか何を話すのか。
はっきり言って頭の中の整理はついていない。
だけど今を逃したら、次はないような気がした。
再びホームへと続く階段を、周りの目なんか気にせずに息を切らせて駆け上がっていく。
近づくほどに鼓動が激しくなり、会うことが怖いとさえ思う。
だけど、会わないといけない。
「ハァハァ……」
颯平と話しをしないと。
例えそれが颯平を傷つけるとしても。
気持ちを奮い立たせ、ホームに到着した私は辺りを見回した。
電車到着間近にN高の生徒で溢れかえるホームの中、やっぱり、見つけられた。
後ろ姿なのに、すぐに颯平を見つけることができたんだ。
軽く息を整えてゆっくりと近づいていく。
心臓がありえないほど鳴り響く。
そして、生唾を呑み込んだ。
“頑張れ”
不思議。
ハル君がそう言って優しく私に微笑んでくれている気がする。
軽く頷いて両手を握り締める。
一歩、一歩近づく。
頑張れ、私。
「颯平!!」