恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
例えば……。
コーヒーカップを思いっきりグルグル回したりだとか、上下に激しく動く乗り物だとか、そういう類のものさえ無理。
もちろんジェットコースターなんて論外。
一回転するだなんて今にも地面に落ちていきそうだし、傾斜角度が30度の急な落下なんて想像しただけで吐きそう。
なのに、なのに……。
今、私の目の前にあるアトラクションは、それすらを上回る私が一番乗りたくないもの。
乗るなんて選択肢を考えることさえなかったもの。
乗っている人の気がしれないもの。
「ほら、ボサッとしてないで行くぞ?」
既に逃げ腰な私の手が彼に握られ、うまく動かない足が引きずられるように前に進んでいく。
「あ……の、無理、です……」
あまりの恐怖にようやく絞りだした言葉。
それなのに、それなのに……。
彼は慈悲の心さえ持ち合わせていないのか。
「つべこべ言わず、さっさとついてこい!!」
だから、ついて行かなければいいのに。
不思議なことに私は彼に逆らうことができず、そのまま引っ張られていった。