恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜

「あれっ? あんた何で赤くなってんの?」



彼は分かっているのか、いないのか。

視線だけこちらに向け、飄々とした態度で言ってきた。

それに引き替え私は、間接キスって意識すればするほど頬が熱くなっていく気がする。



「赤くなんかなっていません!!」

「あっそ」



聞いてきたくせに特に関心がないのか、それ以上問い詰めることもなく遠くを眺める彼。

自分より年上に見えるからか、言い返すことはできても自分から突っ掛かることができない。

彼がそれ以上何も話さないから、その場に立ったまま。

無常にも時間だけが刻々と過ぎていった。


だけど、いつまでもこの状態を続けるわけにもいかなくて、その場を立ち去ろうとようやく声をかけようとした時、



「……何があった?」



今までにない穏やかな声で彼から問いかけられて拍子抜け。



「ブッ!! あんた何て顔してんだよ」

「えっ!? ……あっ」



だって、そんなこと聞かれるなんて思ってもいなかったから。

彼の言動は予測不能。

それに、今、笑った顔がすごく可愛くて……。


さっきまで見せていた笑顔は作りもので、今、目尻にシワを寄せて見せている笑顔が本物なんだって、何だかそんな風に感じた。


そんな笑顔に
胸の鼓動が早くなる――……。



< 19 / 359 >

この作品をシェア

pagetop