恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
こういうことを本当にタイミングがいいって言うんだと思う。
「……っ!!」
微かに触れ合った指先に、信じられないほど心臓が跳ね上がる。
反射的に手を引っ込めるとその拍子にペットボトルが地面に落ちてしまい、コロコロと転がっていく。
あっ、やっちゃった。
「ククッ」
また笑われるし。
そう思って顔を上げて彼に視線を傾けると、立ち上がってペットボトルを追い掛けていた。
その後ろ姿を目で追っていく。
まるでスローモーションのように、彼の動作の一つ一つが脳裏に焼き付く。
「あんた、そそっかしいな」
ペットボトルを拾って微笑しながら振り向いた彼は、さっきまでの刺々しいイメージなんか完全に払拭されていて、何て言うか……その。
「はい、飲みたかったんだろ?」
「いいです! 先にどうぞ」
「俺はいいから」
「私もいいです」
二人でペットボトルの譲り合い。
両者一歩も譲らず平行線を辿る会話。
そんな状態に終止符をうったのはもちろん、彼。
私に向かって差し出しているペットボトルをジッと眺めながら呟いた。
「それなら、口移しで飲ませてやろうか?」