恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜

「そっかー。それなりにうまくやっていってるんだねー」



微笑む優美を見て、キリキリと胸が痛む。

ハル君と再会したことも、そのことで颯平を傷つけていることも。

言うタイミングを逃してしまったら、今更言いづらくて言えない状況に陥ってしまった。

一度言った言葉を、訂正することができない。



「そう言う優美は? 何か変わったことは?」



そんな自分を情けなく思いながら話を逸らす。



「私? んー、彼氏は欲しいんだけど、ピンとくる人がいないんだよねー」

「そっか……」

「あっ!! 紗夜香の周りに誰かいい人いない?」



頭の中に浮かんだのは、ハル君。

ダメだ。

ハル君の存在が私の中から消えない。



「うーん、微妙……」



寧ろ時が経つにつれて、私の中で大きくなっている。

消したい、忘れたい。

これ以上……颯平を傷つけたくない。



「そっかー。じゃあ、颯平にでも聞いてみようかな」



優美の呟きに、私は立ち止まってしまった。

首を傾げて覗き込まれてハッとして、笑いを漏らして何事もなかったかのように歩きだす。



「ねぇー、紗夜香。やっぱ颯平と何かあったんじゃない?」

「本当に何もないよ」



嘘が嘘を重ねていく。



< 234 / 359 >

この作品をシェア

pagetop