恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
私は今まで、颯平の何を見てきたのだろう。
何も見えていなかった。
傷つけたくないって思って起こした行動が、どれだけ颯平を傷つけていたのか。
私の気持ちを知りながら、それでも傍にいた颯平がどんな気持ちだったのか。
何一つ分かっていなかったんだ。
地に足がついている感覚を感じるのがやっとで、押し潰されそうな胸の痛みが走る。
「けど、さすがに優美まで知っているとは思ってなかったな」
「ごめん……颯平」
私のせいで謝る優美に、それに苦笑する颯平。
夢であればいいのにと。
現実を直視できない。
「俺、行くわ。瀬菜、悪いんだけど、これは俺と紗夜香の問題だから口挟まないでくれる? 俺は、紗夜香と別れる気はないし」
遠ざかっていく足音。
後ろ姿は次第に小さくなっていき、夜の闇に紛れていく。
誰より先に動いたのは「颯平っ」と呟いて、私を睨んで慌てて追い掛けていったマネージャー。
私は、帰っていく颯平を追い掛けることも、謝ることさえも、何もできなかった。
頭の中も心の中も
ぐちゃぐちゃ。
悪いのは自分だって分かってる。
だからこそ、どんな言葉も行動も、颯平を傷つけることしかできないと思ってしまう。
だから……、身勝手に傷ついて、体も口も動かすことができなかったんだ。